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双極症

双極症は躁状態の程度によって二つに分類されます。

家庭や仕事に深刻な影響を与え、入院が必要になるほど激しい状態を「躁状態と言います。一方で、多少、お喋りになったり、買い物をしたり、気分が高揚する程度のものを「軽躁状態」と言います。躁状態とうつ状態を繰り返すのを双極I型、軽躁と鬱状態を繰り返すのを双極II型と言います。

「躁状態」とは

気分が高揚したりおしゃべりになったり自身に満ち溢れるなど、一見すると良いことのように思われがちです。そのため、本人にも調子が良いくらいの認識しかなく、躁状態を主訴として来院される方はほとんどいらっしゃいません。しかし、急におしゃべりになったり、周囲に対して高慢な態度をとったり、高額な買い物をしてしまうなど、日常生活に支障をきたすケースも多くありますので、注意が必要です。

双極症とは

うつ状態と気分が高揚する「軽躁状態」を繰り返す病気です。あまり知られていない病気である上に、ご自身での判断が非常に難しいので、ほとんどの患者さまはうつ状態を主訴として来院されます。

双極症の3分の2はうつ病相で発症します。単極性うつ病として診断された人の約10%が双極症になったとの報告があります。

欧米では外来に抑うつ状態で受診する患者さんの2〜3割は双極症であるという報告もあります。双極症のうつ状態は、非定型のうつ(過眠、過食など)の形をとることがあります。非定型のうつ状態をみたら、双極症の可能性を念頭におく必要があります。

抗うつ薬を処方して躁転した人、1年に2回以上うつのエピソードを認められれば、双極症をうたがいます。

また、ADHD(注意欠如多動症)と双極症はそもそも併存を多く認めますが、来院時の主訴が似ていますので、鑑別することが重要です。 症状として重なり合うところが多いです。
ASD(自閉スペクトラム症)も、寝食を忘れて一つのことに没頭する様が、双極症と誤診される場合があります。

症例① 35歳男性会社員Aさんの場合

Aさんは、ある日突然躁状態となりました。最初は会社で、大声でいろんなことを話し始めるようになりました。その後、症状はエスカレートし、ついには怒り出して上司と大喧嘩した結果、会社をやめると言い出しました。会社をやめてしまった後、株に手を出し、結果大損してしまい、気が付くとAさんはすべてを失ってしまいました。Aさんは、自分の言動を非常に後悔していましたが、なぜそんなことをしてしまったのかまったく分からないそうです。

【治療結果】

Aさんはすべてを失った後、うつ状態で来院されました。しかり話を聞くことで、これは双極症であると診断。まずは薬物療法で気分がある程度安定するのを待ちます。薬物療法と並行して、セルフモニタリングで日々の気分を数値化すること、それぞれの数値が出た時の対処法などをアドバイスしました。これを毎日繰り返すことにより、徐々にトラブルを避けることができるようになり、また薬の効果もあり気分が安定するようになりました。勤めていた会社にも事情を話し、Aさんは無事会社に復帰することができました。

症例② 29歳女性主婦Bさんの場合

Bさんは最近元気がない、何もやる気が起きないということで来院されました。掃除や洗濯、料理など、やらなければいけないと分かっているのにどうしても体が動かない。自分はダメな母親だ、消えてしまいたいと思うようになり、ご主人と一緒に来院されました。しかし話を聞いてみると、実は先週まではとても元気でした。眠らなくても平気なので夜更かしして編み物をしたり、そのまま買い物やヨガに出かけたりととても活動的で、ご主人も元気すぎじゃないかと心配されるほどでした。そこで、双極症であると診断し、治療を開始しました。

【治療結果】

Aさんの時と同様、薬物療法を続けながら、日々の気分を数値化するセルフモニタリングを行ってもらいました。Bさんの場合は躁状態の症状が比較的軽度だったため、うつ状態と躁状態の時で、なるべく生活リズムが変わらないように過ごすことを心がけました。ご家族の理解もあり、徐々に気分も安定し、気分の数値化をしなくても自分の気持ちをコントロールができるようになりました。

治療法

暴れまわって手がつけられない、高額な買い物をどんどんしてしまうなど、症状がひどい場合は入院というケースが考えられます。当院では、入院の必要性がない軽度の症状の方の治療を行っています。

まず、有効な治療法としては薬物療法が挙げられます。気分安定薬や抗精神病薬などで気分をある程度コントロールできるようになります。

その他に当院では、薬だけに頼るのではなく、自分自身でも気分のコントロールができるようになるため、セルフモニタリングを取り入れています。まずは毎日の気分を、下記のように数値にあらわしてもらいます。

+5 妄想あり、物にあたる
+4 躁状態、判断力低下、大声で叫ぶ
+3 軽躁状態、気分高揚、判断力は保たれている、早口になる、まくしたてる
+2 活動的、せわしない、じっとしていられない、活力上昇、無言になる、一人になりたくなる
+1 愉快、元気、むかむかする
0 異常なし
-1 低調、落ち込み気味、元気なし
-2 悲しい、涙もろい、悲観的、ふさぎ込む
-3 うつ状態、活動低下
-4 動けず、絶望
-5 死にたいと思う

さらに、それぞれの数値の際は、どういったことに気を付けたら良いのかをアドバイスします。これを毎日繰り返すことにより、徐々に「こういう気分の時はこうすれば良い」ということが習慣化され、日常生活でのトラブルを避けられるようになります。

また、双極症の治療には、周囲の方の協力が必要不可欠です。可能であれば、ご家族や同僚など、普段一緒に過ごす機会が多い方にも話を聞いてもらうことをお勧めします。特に、数値の振れ幅が大きい時は、ご自身で分かっていてもコントロールできないこともありますが、周囲の方のサポートがあれば乗り越えることができます。

双極症は診断がしっかりつけば、比較的、治療法が確立している疾患です。
ただし、再発率が高く、継続的に加療することが必要です。
そのために、疾患を受容してもらうための心理教育が大事です。再発を繰り返している患者さんは、ご家族との関係がうまくいっていないことが多いので、ご家族にもきちんとお話をする必要があると思います。

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